やっと、勝てました。
秋葉監督は、試合前に「ゼロで抑える」と言っていた
2026年10月10日(土)18時、ヤマハスタジアム(磐田)。明治安田J2リーグ第10節、北海道コンサドーレ札幌戦です。
磐田はリーグ戦で3連敗中。新潟に1-2、八戸に1-2、仙台に1-2。3試合すべて1点差で、3試合すべて同じスコアでした(シュートは3本だけ。90+4分、首位仙台に力尽きる|仙台 2-1 磐田)。
この試合の前、クラブ公式に秋葉忠宏監督の言葉が載っていました。
ここで連敗を止めなければ、本当に負のスパイラルに入ってしまう
そして、もうひとつ。
今一度、全員で「ゼロで抑える」という強烈な守備の意識にマインドを変えていきたい
ここまで9試合で13失点。優勝するチームは失点が少ない、という話をしたうえでの言葉だそうです。
仙台戦のあと、チームは約2時間かけて試合映像をフルで見返すミーティングをやったとのこと。佐藤大樹は「ダメなところはダメ、いいところは続けるという話し合いがあって、いい緊張感があった」、主将の藤原健介は「全員が思っていることを話した」と話しています。
その結果がどうだったか、という試合です。
ヤマハに12,349人
この日の入場者数は12,349人。天候は晴れ、気温23.5℃、湿度55%、無風。ピッチは全面良芝。主審は清水勇人さん。キックオフは18時03分でした。
この日は「ヤマハ・ヤマハ発動機マッチ」。EXILE/三代目J SOUL BROTHERSの小林直己さんが来場して花束贈呈とハーフタイムの挨拶、ヤマハ野球部のストラックアウト、ブラスアンサンブルの演奏、電動車椅子サッカーの体験とエキシビション。キックオフ前にはジュビレーションのペンライト演出で、スタンドがサックスブルー一色になりました。
先発は3人変更。牲川歩見が2試合ぶりに戻ってきた
先発は、前節の仙台戦から3人変更です。
| OUT(仙台戦) | IN(札幌戦) |
|---|---|
| GK 三浦龍輝 | GK 牲川歩見 |
| MF 金子大毅 | MF ユーリ ララ |
| MF 川合徳孟 | MF イアゴ テレス |
最終ラインの4人(ダニーロ・桑原航太・山﨑浩介・吉村瑠晟)は据え置き。布陣も4-2-3-1のままです。
ここで目を引いたのがGKでした。第1節から第7節まで全試合に先発していた牲川歩見が、八戸戦と仙台戦では外れていました。それが2試合ぶりに戻ってきた。今季の磐田は、これでGKが3人目です。
対する札幌は3-4-2-1。監督は川井健太さん。前節から1人だけの変更で、白井陽斗が外れて長谷川竜也が入りました。札幌は前節、いわきに2-1で勝って開幕戦以来8試合ぶりの白星。今季初の連勝を狙って乗り込んできています。
前半、磐田は10本打っていた
「押し気味の前半」という印象でしたが、数字で見ると、思っていた以上に押していました。
| 前半終了時点 | 磐田 | 札幌 |
|---|---|---|
| シュート | 10本 | 3本 |
| 枠内シュート | 2本 | 2本 |
| ゴール期待値(xG) | 1.48 | 0.10 |
| コーナーキック | 2本 | 0本 |
シュート10対3。ゴール期待値にいたっては1.48対0.10です。15倍近い差がついています。
20分の時点で、磐田6本に対して札幌は0本。Optaも10分の時点で札幌について「10分が経過するも、まだシュートに至るシーンを作り出せない」と出していました。
でも、枠内は2本だった
ただ、「なかなかシュートまで持っていけない、もどかしい展開」という感覚も、間違っていません。
10本打って、枠に飛んだのは2本だけです。
しかも20分時点の枠内は1本、40分時点でも1本。つまり前半の大半、打ってはいるけれど枠には行っていないという時間が続いていました。
ポゼッションの推移も、途中で入れ替わっています。
| 時間帯 | 磐田 | 札幌 |
|---|---|---|
| 0〜15分 | 57% | 43% |
| 15〜30分 | 31% | 69% |
| 前半トータル | 50% | 50% |
最初の15分は磐田のものでしたが、15分から30分は札幌が69%。この時間帯に札幌も出てきて、29分と34分に長谷川竜也のシュートがありました。どちらも牲川歩見がセーブしています。
押していたけれど、決めきれない。そして相手も出てくる。もどかしい、というのはそういう前半でした。
40分、佐藤大樹が倒された
そして40分でした。
桑原航太のパスがペナルティエリア内の吉村瑠晟につながり、そこから佐藤大樹が西野奨太にファウルを受けてPK獲得。西野には同時に警告が出ています。
ここに、小さいけれど大事な話があります。
佐藤大樹は、北海道出身で、札幌のアカデミー育ちなんです。つまりこの日は古巣との一戦でした。
試合前、本人はこう話していました。
すごく思い入れのある相手からゴールを決めてアピールしたい
結果から言うと、佐藤大樹はこの日ゴールを決めていません。
でも、決勝点を生んだのは彼でした。古巣から奪ったのは、ゴールではなくPKだった。これはこれで、十分に「アピール」だったと思います。
もうひとつ皮肉だったのが、ファウルをした西野奨太のほうです。この選手、Jリーグ公式の試合前の見どころで札幌の「キーマン」として名指しされていた選手でした。「今季はチーム最多のデュエル勝利総数を記録し、前節はセットプレーから先制点を奪うなど、攻守両面でチームを支えている」と。
その守備の要が、PKを与えて警告を受けました。
42分、イアゴ テレスが右下へ
キッカーはイアゴ テレス。
右足で、ゴール右下。落ち着いたものでした。42分、1-0。
イアゴ テレスは26歳のブラジル人で、今年7月9日にロンドリーナEC(ブラジル)から期限付き移籍で加入した選手です。8月8日の秋田戦でJ初出場、8月22日の徳島戦でJ初ゴール。そこから栃木シティ戦で2点を決めて、この日が今季リーグ戦4点目になります。
前節の仙台戦は出場していません。その前日の10月3日にU-21Jリーグで先発フル出場していました。そこから中6日での先発復帰です。
Optaが42分にこんな数字も出していました。
イアゴテレスはここまでで5本以上のシュートを放っている
前半だけで5本以上。磐田の10本のうち半分がこの人です。相当に積極的でした。
流れの中からの得点ではありません。でも、前半のゴール期待値1.48という数字を見れば、入るべくして入った1点だったとも言えます。
後半、磐田のシュートは1本だけ
両チームとも、ハーフタイムの交代はゼロ。札幌ボールで後半が始まりました。
そして、ここからの45分が、この試合のすべてです。
後半、磐田のシュートは1本しかありません。
48分、桑原航太がペナルティエリア手前から右足で枠内へ。これは田川知樹にセーブされました。以上です。
後半のゴール期待値は、磐田が0.03。ほぼゼロです。
| 後半のみ(全体−前半) | 磐田 | 札幌 |
|---|---|---|
| シュート | 1本 | 9本 |
| 枠内シュート | 1本 | 1本 |
| ゴール期待値(xG) | 0.03 | 0.62 |
「一進一退」という感覚だったとのことですが、少なくともシュートの数では一方通行でした。磐田1本、札幌9本。
ただし、ここが重要なところで、札幌の9本のうち枠に飛んだのは1本だけです。
終盤、札幌の猛攻
札幌は64分にヴィニ ペイショットを投入します。この交代が、終盤の圧の中心になりました。
| 時間 | 場面 |
|---|---|
| 75分 | Vペイショットのクロス → ダニーロがクリア |
| 78分 | Vペイショットがエリア中央からシュート → ゴール上に外れる |
| 81分 | Vペイショットがエリア手前からシュート → ゴール上に外れる |
| 83分 | Vペイショットのクロス → ダニーロがクリア |
| 84分 | Vペイショットが枠内へ → ブロック |
| 85分 | 青木亮太がエリア手前からシュート → ゴール上に外れる |
| 90+3分 | 内田瑞己が枠内へ → 野澤零温がブロック |
| 90+4分 | スパチョークが枠内へ → ブロック |
| 90+5分 | 内田瑞己が枠内へ → 川﨑一輝がブロック |
アディショナルタイムだけで、枠内シュートを3本ブロックしています。
75分から90分までのポゼッションは、磐田38%に対して札幌62%。ボールはずっと札幌が持っていました。
牲川歩見のセーブは2本。どちらも前半だった
ここが、この試合でいちばん面白かったところです。
牲川歩見のセーブ数は、90分を通じて2本。29分と34分の長谷川竜也のシュートです。
つまり後半のセーブは、記録上ゼロ。
札幌が9本打った後半、牲川がボールを触って止めた場面がない。枠に飛んだ1本も、ブロックや守備陣の対応で終わっています。
これは「GKが当たっていたから守り切れた」という試合ではありません。ゴールの前に行く前に止めていたという試合です。
クリア34本、ブロック16本
その証拠が、この数字です。
| 項目 | 磐田 | 札幌 |
|---|---|---|
| クリア | 34回 | 18回 |
| ブロック | 16回 | 11回 |
| タックル | 17回 | 22回 |
| ボールタッチ | 783 | 1,181 |
| 1対1勝利数 | 17 | 25 |
クリア34本、ブロック16本。ボールタッチ数では400近く下回り、1対1でも負けている。それでもゼロで抑えた。
八戸戦のとき、磐田はクリア43本の壁を崩せずに負けました(クリア42本の壁。24本打って、1点|磐田 1-2 八戸)。仙台戦では、自分たちがクリア48本の側に回って、90+4分に崩されました。
そして今回、クリア34本の側に回って、今度は崩されなかった。
3試合続けて、同じ構図を別の立場で見ています。そして3試合目で、ようやく守り切りました。
数字で見る90分
試合全体のスタッツです。
| 項目 | 磐田 | 札幌 |
|---|---|---|
| シュート | 11本 | 12本 |
| 枠内シュート | 3本 | 3本 |
| ゴール期待値(xG) | 1.51 | 0.72 |
| ボール支配率 | 45% | 55% |
| パス成功率 | 78.2% | 82.3% |
| チャンスクリエイト | 10回 | 9回 |
| クロス | 15本 | 22本 |
| コーナーキック | 5本 | 3本 |
| ファウル | 8回 | 13回 |
| 警告 | 2枚 | 1枚 |
シュート数も枠内シュートもほぼ互角。支配率は札幌。でもゴール期待値は1.51対0.72で磐田が倍以上です。
この試合の磐田は、少ない機会をいい形で作っていたチームでした。そしてそのほとんどが、前半に集中していました。
個人で見ると、チャンスクリエイト数の最多は乾貴士の5回。69分に小原基樹と交代していますが、それまでの69分間でチームの半分を作っています。
「ゼロで抑える」は、実現した
試合終了。1-0。
この完封は、今季リーグ戦で2度目です。1度目は9月12日の甲府戦(1-0)。つまりホームでは今季初の無失点になります。
| 節 | 日付 | 対戦 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 第5節 | 9/6 | 富山(H) | 0-1 ● |
| 第6節 | 9/12 | 甲府(A) | 1-0 ○ |
| 第7節 | 9/19 | 新潟(A) | 1-2 ● |
| 第8節 | 9/26 | 八戸(H) | 1-2 ● |
| 第9節 | 10/4 | 仙台(A) | 1-2 ● |
| 第10節 | 10/10 | 札幌(H) | 1-0 ○ |
3連敗を止めて、4試合ぶりの勝点3です。
秋葉監督が試合前に掲げた「ゼロで抑える」が、そのまま結果になりました。内容が美しかったかと言われると、後半のシュート1本というのは正直かなり苦しい。でも、宣言したことをやったという意味では、この試合には意味があります。
ちなみにヤマハスタジアムでの直近の札幌戦は、今年3月14日の百年構想リーグで0-1でした。同じ場所で、きっちり返しています。
ジョアン ヴィクトルが、9月度のベストゴールに
試合とは直接関係ありませんが、うれしいニュースがありました。
ジョアン ヴィクトルが、Jリーグの2026年9月度・J2月間ベストゴールを受賞しています。
磐田が9月のリーグ戦で挙げた得点は、甲府戦の川合徳孟、新潟戦の佐藤大樹、そして八戸戦のジョアン ヴィクトルの3つだけ。つまり受賞したのは、9月26日の八戸戦で決めた、あのゴールです。
井上潮音の浮き球を胸でコントロールして、そのままオーバーヘッド。負けた試合の中の、唯一の得点でした。
あのときは「1点しか取れなかった」という書き方をしましたが、その1点が、月間でいちばんのゴールだったわけです。
この日のジョアン ヴィクトルは先発フル出場とはいかず、69分に太田龍之介と交代しています。それでも、前半はよく体を張っていました。
15位から10位へ。次はアウェイで宮崎
この勝利で、磐田は4勝1分5敗、勝点13。順位は15位から10位へ、一気に5つ上がりました。
| 順位 | クラブ | 勝点 | 試合 |
|---|---|---|---|
| 1 | RB大宮アルディージャ | 20 | 10 |
| 2 | ベガルタ仙台 | 20 | 9 |
| 3 | アルビレックス新潟 | 19 | 9 |
| … | … | … | … |
| 10 | ジュビロ磐田 | 13 | 10 |
| … | … | … | … |
| 20 | 北海道コンサドーレ札幌 | 8 | 10 |
勝点13は、8位の藤枝・9位の秋田と並んでいます。1勝で景色が変わる位置に戻ってきました。
秋葉監督が仙台戦のあとに言っていた「中断期間までに最低限、勝点5差まで持ってこられるように」。首位の大宮・仙台とは勝点7差です。まだ届いていませんが、10差から7差になりました。
一方の札幌は、これで最下位(20位)に転落。今季初の連勝を狙った試合でした。
次節は10月17日(土)19時、アウェイのいちご宮崎新富サッカー場でテゲバジャーロ宮崎戦です。
内容はまだ、胸を張れるものではありません。後半のシュート1本は、次も通用するやり方ではない。
でも、まずは止まりました。ここからです。
※スタッツはJ.Leagueサイトのスタッツ(Opta集計)に基づく、試合直後の数値です。本稿執筆時点でJ.League公式の試合記録がまだ発行されておらず、後日数値が修正される可能性があります。なお後半のスタッツは、試合全体から前半を差し引いた算出値です。走行距離・スプリント数は未公開です。
※本文中に引用した秋葉忠宏監督・佐藤大樹・藤原健介のコメントは、いずれも試合前にクラブ公式およびJ.League公式に掲載されたものです。試合後の監督・選手コメントは、本稿執筆時点で両クラブ公式・J.League公式とも未掲載です。公開され次第、追記します。
※PK獲得の場面について、Optaの記録は「佐藤が西野からファウルを受けてPKを獲得する」とのみ記しています。ファウルの種類は確認できていません。

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